#exodus - 武邑塾 2021特別セミナー
デジタル・エクソダスーーシステムからの脱出か、ガバナンスの再構築か
#exodus
脱出する?それともとどまる? ────── すでに現実は、わたしたちが知っている現実から脱却しはじめている。デジタル社会の変転を到来からいまにいたるまでフロントロウで見つめてきたメディア美学者・武邑光裕が贈る、待望のカンファレンス「#exodus」。いまこの世界で起きている驚くべき社会の変化にキャッチアップし、古いいまから新しいいまへとエクソダスするための道標。
Exodus or staying here? ────── Reality has already begun to break away from reality as we know it. Media aesthetics scholar Mitsuhiro Takemura, who has had a front-row seat to the transformation of the digital society from its inception to the present, will be holding his long-awaited conference, #exodus. This is a guidepost to catch up with the amazing social changes happening in the world today, and to exodus now from the old to the new.
参加申込 – Peatix
第1回 https://takemurajuku20211013.peatix.com
第2回 https://takemurajuku211110.peatix.com/
第3回 https://takemurajuku211201.peatix.com/
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#exodus 1: Digital Nomad - デジタルノマド:脱出する10億人が変える世界
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#exodus 2: Creator's Economy - クリエイター・エコノミー:経済的個人主義がつくる経済圏
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#exodus 3: Three Sphere Problem - 三体圏(西洋・東洋・デジタル)問題から視るデジタル・パラダイム
デジタル・エクソダスの時代へ
私たちは今、デジタル・エクソダスの時代をむかえつつあります。エクソダスとは、離郷・出国を意味し、もとの意味は、『旧約聖書』の第二書、モーセによる「出エジプト記」のことを指します。17世紀前半、ヨーロッパを脱出して北米大陸へ移住したピューリタン(清教徒)は、自らを「ピューリタン・エクソダス」と呼び、神の下にある選ばれし民だと考えました。
ピューリタニズムは資本主義の源流でもあったわけですが、今、気候変動や持続可能性の観点から、世界を蒐集し続けてきた資本主義には問題が山積し、そのシステムからの脱出も議論されています。デジタル・エクソダスは、2030年までに10億人に達すると予測されるデジタルノマド(グローバル・ネイティブ)を先導に、人々が既存の「社会システム」、つまり、これまでの支配的な中央集権的な制度から離反するデジタル戦術です。
ドイツの哲学者ユルゲン・ハーバーマス(Jürgen Habermas、1929年~)は、現代社会を「システムによる生活世界の植民地化」と呼びました。システムとは、政府、官僚主義、経済など、大小を問わず、中央集権的な組織の権力構造や社会制度のことであり、生活世界とは、本来はシステムに回収されない私たちの生活圏(価値観、信念、夢、神話)のことです。「システム」と「生活世界」の均衡が崩れ、「システム」が全域的に浸透していくのが現代社会であると、ハーバーマスは警告しました。
これは公共圏が機能しない極めて危険な状態であること、マスメディアが資本と結託したために、ニュースが「私的なもの(特定の誰かのもの)」になったことなどが問題の核心でした。ソーシャルメディアの登場は、国境を超えた人々の交流を促進し、公共圏の復権として期待されましたが、大手ソーシャルメディアはシステム(アルゴリズム)に監視資本主義を実装し、ユーザーのプライバシー侵害からメンタルヘルスへの影響など、膨れ上がった問題を未だに抱えたままです。
こうした状況を受けて、ソーシャルメディアの次の革命と目される分散型自律組織 (DAO)と、その新たな公共圏への期待は、現状のシステムからの脱出とインターネット上の国家の創出という目標に向かいはじめています。
DAOによって設計されるサイバー国家が現実のものになりつつある今、私たちはこれまでの国家に留まるのか、それともエクソダスの道を選ぶのか?インターネットの出現から30年、かつてサイファーパンクが描いた夢は、「現実」を乗り超えられるのでしょうか?2021年秋、私たちはこの難題と向き合います。
武邑塾2021は、デジタル・エクソダスを検証するため、武邑光裕(武邑塾塾長)をモデレーターに、3回の各論を設定し、毎回、多彩なゲストとの対話を予定しています。
デジタルノマド、クリエイター・エコノミー、そしてサイバー国家。この3つ流れは、私たちの仕事と生活にどんな影響をもたらすのでしょうか? DXという名の新たな「システム」により、個人の主権喪失が危惧される中、国民国家から都市国家への転換、そしてサイバー国家に向けたデジタル・エクソダスの可能性と課題に迫ります。
各回 テーマ
#exodus 1 | Digital Nomadデジタルノマド:脱出する10億人が変える世界
コロナ・パンデミックの過程で、多くの人々は自分たちが実際に世界のどこにいても、働くことができることに気づきました。同時に、誤った政策決定は、政府や機関に対する市民の信頼の低下につながりました。そして、分散型テクノロジーは、まったく新しい形の人間の協力を可能にしています。ソーシャルメディアの次の革命として注目を集めているDAO(分散型自律組織)とサイバー国家の創出、そしてその原動力となっているデジタルノマドの台頭は何を意味しているのでしょうか?
デジタルノマドの数は、この5年間で毎年倍増しています。しかし、つい最近まで、多くの人々はデジタル・ノマディズムが本当に将来的に大流行するのか、それとも単なる一時的な流行なのかについても懐疑的でした。誰もがデジタルノマドのアイデアに惹かれます。機会があれば、多くの人が自分もそうなりたいと考えるライフスタイルです。しかし、「普通の人」にとっては、誇大広告のように思われてきました。
ところが、パンデミックの数ヶ月で、突然、その状況が変わりました。今、保守的な投資家たちでさえ、デジタルノマドが単なる流行ではなく、メガトレンドであることを当然のこととして受け入れています。このような変化の理由は、政府と企業の両方でデジタルノマドへの期待に進展があったからです。
「デジタルノマド」という言葉が生まれたのは、1997年、日本の半導体専門家である牧本次生氏が、David Mannersとともに、私たちの生活や仕事の仕方に革命が起こると予測した本、”Digital Nomad”を書いたときでした。牧本氏は、「将来の労働者は、場所に縛られた職業の錨を外し、遠く離れた土地に船出し、インターネット上で仕事をして生計を立てるようになるだろう」と予測しました。
2019年、コンサルティング会社のMBO Partnersが発表した調査によると、アメリカの労働者のうち730万人が自分をデジタルノマドと称し、さらに1610万人が今後2年以内にデジタルノマドになる予定だと答えています。これに伴い、人々の都市からの「脱出」も顕著になっています。英国の経済誌The Economistの推測によれば、今後、デジタルノマドは10億人に膨れ上がるとの報告もあります。
ジェームズ・デール・デビッドソンとウィリアム・リーズ・モッグ卿が道を開き、1997年に出版された著書『主権を持つ個人:情報時代への移行をマスターする』(The Sovereign Individual: Mastering the Transition to the Information Age)は、その予言力のために、デジタル・ノマド、ビットコインの弟子たち、クリプト・アナーキストのサークルに大きな影響を与え続けてきました。中でもインターネット上に国家が生まれるという予測は、まさに今、実現しつつあります。
企業は、21世紀の最初の20年間に、人材をめぐる国境のない戦いの舞台を整えました。GoogleやFacebookなどのテック巨人は、熟練技術労働者を大胆に追求し、適切な人材を獲得するために、国際的な採用や大学との提携に毎年多額の投資を推進しました。これにより、テクノロジーとイノベーションのハブとしてのシリコンバレーの隆盛がもたらされました。しかし、次のシリコンバレーは、もはや単一の都市や地域ではありません。
エストニア、クロアチア、ジョージアなどですでに始まったデジタルノマド・ビザのトレンドにより、企業は労働者を雇用し、維持する方法について異なる考え方をする必要があります。突然、あらゆる規模の企業が、地域を超えたグローバル・ネイティブの存在を考える必要があります。人材争奪戦は企業間だけでなく、企業と国との間でも起こります。これは、オペレーションの変革を目指す組織にとっては難しい課題ですが、アーリー アダプターである分散型企業は、ビジネス上のメリットを強調することが可能です。
開催日時: 2021年10月13日(水曜)17時30分から20時30分まで
参加申込: https://takemurajuku20211013.peatix.comゲスト:
《キーノート》ローレン・ラザヴィ(Lauren Razavi:デジタルノマド・ライター、戦略家、インターネット国家「プルミア」創設メンバー、『Global Natives: The New Frontiers of Work, Travel & Innovation』の著者)
矢野圭一郎(Kay Yano:Co-founder & CEO at SWAT Lab. Inc、ベルリン在)
須之内元洋(Motohiro Sunouchi:テックデザイナー、札幌市立大学講師)モデレーター:
武邑光裕(Mitsuhiro Takemura:武邑塾塾長)
#exodus 2 | Creator's Economyクリエイター・エコノミー:経済的個人主義がつくる経済圏
クリエイター・エコノミーとは、ブロガーからインフルエンサー、YouTuber、ライターに至るまで、世界で5千万人の独立したクリエイターによって構築され、自分自身というキャラクター、スキル、またはコンテンツを収益化する1,042億ドル(約11兆5,700億円)規模の経済圏を意味します。これは、将来的には数兆ドルの規模となると予測されています。勢いづくクリエイター経済を支えているのは、自らのコンテンツをより直接的に収益化するためのエコシステムです。
今や注目のコンテンツは大手メディアの占有物ではありません。そのほとんどは、一般の人々によって生み出されているマイクロ・コンテントです。最新のニュースはSubstackで、最新の映像コンテンツはTwitch、クリエイター支援プラットフォームはPatreon、自分のファン専用のコンテンツ配信はOnlyFansと、今や大手ソーシャルメディアさえ、レガシーとなる時代です。
ブロックチェーン、暗号通貨、クリエイター・エコノミー、グリーン革命、リモートワーク、マイクロ・スクール、NFT(非代替トークン)、メタバース。これらの共通点は何でしょうか?それは、人々が既存の「レガシーシステム」、つまりこれまでの制度から離れて行く現象なのです。貨幣制度、大手銀行、マスメディア、産業教育、9時から5時までのラットレースからの分散ドロップアウトは、人々が自らの主権を取り戻そうと努力する経済個人主義と分散化の動きを示しています。
これは、ヒッピーが都市から脱落して山の中で暮らすような話ではありません。クリエイター経済を後押ししているのは、システムへの不信感の高まりと、自分の意思で充実した人生を送りたいという願望です。新しい焦点は、既存の制度からのエクソダスが、ブロックチェーン・ベースのトラスト・システム、ソーシャル・ネットワーキング・プラットフォーム、コワーキング・スペース、オンライン・コミュニティなどのツールやつながりの増加を伴っていることです。
つまり、私たちが目にしているのは、インターネットの黎明期にあったサイバー・ユートピアが復活したような光景なのです。
開催日時: 2021年11月10日(水曜) 17時30分から20時30分まで
参加申込: https://takemurajuku211110.peatix.com/ゲスト:
《キーノート》ボグダン・ゴルガネアヌ (Bogdan Gorganeanu—コンテンツ・パブリッシャー、OTAKU SECRET、ルーマニア在)
筑紫 ボーディ二 遼太郎 (Ryotaro Bordini Chikushi—起業家、NION NFT CEO、ベルリン在)
水野 祐(Tasuku Mizuno:弁護士、Arts and Law 代表理事、Creative Commons Japan, Director)モデレーター:
武邑光裕(Mitsuhiro Takemura:武邑塾塾長)
#exodus 3 | Three Sphere Problem三体圏(西洋・東洋・デジタル)問題から視るデジタル・パラダイム
私たちはすでに新しいパラダイムに生きています。古いルールはもう適用されません。グローバリズムは、3つの圏に置き換えられました。東洋、西洋、デジタル圏。この3つの圏は、特定の国や地域に限定されることはありません。日本は西洋圏に属し、独自の文明だとする見解もあります。しかし、それぞれの圏は、本来、異なる「文明化」技術にもとづいてきました。
西洋(West) アルファベット the alphabet
東洋(East) 表意/象形文字 ideo/pictographs
デジタル(Digital) バイナリコード binary code (2進数符号)これらの3体圏は、最も基本的なレベルで、お互いと対話することができないのです。この3体問題をめぐる葛藤と緊張は、中国のSF作家である劉慈欣(りゅう じきん、Cixin Liu)が比喩的に描写した世界であり、均衡と対話の道筋は非常に限定されています。
同時に、政治・経済は大きく変化しており、「普通」に戻ることはないでしょう。ロボットが急速に人間の労働者を代替し、AIも急速に進化しています。
信頼が大きく損なわれた制度は機能不全となっています。20世紀後半からのテレビの支配力とは大きく異なるデジタル・パラダイムを理解する必要があります。デジタル・パラダイムの状況下では制度は変形し、改革され、変化していきます。かつて『オズの魔法使い』でドロシーが言ったように、”I don’t believe we’re anymore in Kansas.” ―「ここはもうカンザスではない」のです。
#exodusシリーズ最終回は、デジタルライフ研究センター(Center for the Study of Digital Life)所長で、インターネットの黎明期からデジタル社会の行方を予見し、マーシャル・マクルーハンやノーバート・ウィナーの本来の影響力を指摘しつづけてきたマーク・スタールマンを特別ゲストに招き、私たちが直面している3体圏(西洋・東洋・デジタル)問題を捉え、今後のデジタル社会の行方を包括的に考えます。
デジタルノマド、クリエイター経済を貫く分散ドロップアウトの大規模な現象から、デジタル・エクソダスは何からの脱出なのか?デジタル社会はトランスヒューマニズムによって制覇されてしまうのか?既存の国家や政府は、デジタル時代に耐えうるようなヒューマンスケールによる再構築は可能なのか?3体問題として世界を視る新たな観点と、私たちが選択する未来のガバナンスを見据え、デジタル社会が抱える本質的な課題に迫ります。
開催日時: 2021年12月1日(水曜) 午前10時30分から午後1時30分まで
(NYのタイムゾーンとの調整により、午前10時30分からの開催)
参加申込: https://takemurajuku211201.peatix.com/特別ゲスト:
マーク・スタールマン (Mark Stahlman —デジタルライフ研究センター所長、ニューヨーク在住) https://www.digitallife.center/モデレーター:
武邑光裕(Mitsuhiro Takemura:武邑塾塾長)#exodus シリーズ総括対話
若林 恵(Kei Wakabayashi、コンテンツプロデューサー、黒鳥社)✕ 武邑光裕
#exodus 開催概要
- 日時
- 計3回 開催
第1回 2021年10月13日(水曜)17:30〜20:30
第2回 2021年11月10日(水曜)17:30〜20:30
第3回 2021年12月1日(水曜)午前10:30〜13:30 - 形式
- オンライン・セミナー(特設会場からのライブ配信)
コミュニケーション・サポート:日英同時通訳
ライブ配信後、特設サイトから動画アーカイブでの視聴可能 - 参加申込
- Peatix
第1回 https://takemurajuku20211013.peatix.com
第2回 https://takemurajuku211110.peatix.com/
第3回 https://takemurajuku211201.peatix.com/ - 参加費
- 無料
- 主催
- 武邑塾2021事務局
- 協賛
- パーソルキャリア株式会社
- 制作
- 黒鳥社、Kassy Inc.